野球少年冨岡剛が“ラグビーに恋をした日”、そしてAI革命へまでの道のり

2025年6月1日

グローブとバットが、すべてだった日々

冨岡剛さんが最初に夢中になったスポーツ、それは野球でした。小学生の頃からリトルリーグに所属し、毎日放課後はグローブとバットを手に練習。甲子園出場を目指して汗を流していた、いわゆる“ど真ん中の野球少年”だったそうです。

中学生のある日、テレビで偶然観た大学ラグビーの“早明戦”。その瞬間、冨岡さんの心はラグビーに一気に奪われたといいます。泥だらけになりながら体をぶつけ合い、全力でトライを目指すその姿に「自分もこのフィールドに立ちたい」と思ったそうです。

周囲の人たちは驚いたそうです。「あんなに野球に夢中だったのに」と。でも冨岡さんの気持ちは揺るぎませんでした。慣れないタックルや体の使い方に苦戦しながらも、“本気でやる”という気持ちだけは誰にも負けなかったと語ります。

体格に恵まれていたわけでもなく、運動神経だけで勝負できるタイプでもなかった冨岡さん。だからこそ、とにかく練習、練習、練習。1本1本のキック、1秒1秒の走りの中に“自分らしさ”を込めていたそうです。

青学ラグビー部では、ただがむしゃらにプレーするのではなく、どうすればチーム全体がうまく動くかを常に考えるスタイルに惹かれていきました。冨岡さんは、味方の動き、敵の位置、風向きすらも読んでパスを出す“頭脳派ラガーマン”として成長していきます。

大学卒業後は神戸製鋼に入団。社会人ラグビー界でも有数の強豪チームに身を置きながら、1年目から得点王に輝くなど大活躍。プレースキックでは“外さない男”として信頼を集め、“ゴルゴ冨岡”という異名までつけられました。

国立競技場で行われた決勝戦で、冨岡さんは“1試合71得点”という記録を打ち立てます。これは今でも破られていない記録であり、まさに“国立に名前を残した男”となりました。

振り返ってみれば、野球をしていた日々が、今の冨岡さんを作った一面もあると語ります。正確なフォーム、集中力、反復練習――すべては野球から始まり、ラグビーで花開いた。スポーツは違えど、“信じて打ち込む”という姿勢だけは変わらなかったそうです。

誰でも、一つのことに夢中になっていると、他の道が見えなくなりがち。でも冨岡剛さんは、自分の心の声に正直に従って、新しい道を選びました。その先で、努力し、壁にぶつかり、それでも進み続けた。少年が選んだラグビーという道は、今も彼の人生を力強く支えているのです。